YAMAMORI MEETING VOL.1 - 髙橋伸一さん|YAMAMORI PROJECT

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VOL. 1 - 髙橋伸一さん(山形県真室川町)
2013年7月17日

山形県北部、山と森に囲まれ、川が流れ田畑の広がる、つまりは日本のひとつの山里に髙橋伸一さんは暮らしている。真室川に生まれ、真室川で育ち、今も真室川の産品を発信すべく奔走する、生粋の真室川人である。牛を飼い田畑を耕す農家に育った伸一さんが、「なんであんたみたいな若いもんが」と作り手に訝しがられながらも学んできたのが蔓細工、そして今や免許皆伝と言われている藁細工だ。
紙とペンさえあれば嬉しいという幼少期から、ものづくりへの興味は尽きることなく、版画・水彩・箸作り・油絵・ボタニカルアートなど様々に楽しんできた。「どこへも行かない。ここだけだ。意識したことはないけど、好きだ。いい所だと思う。」とさらりと言える土地で、そこに残るものづくりに惹かれていったのは必然のようでもあるけれど、「俺は今も子どもじゃないだろうか」と笑う伸一さんの内から湧きあがる“知りたい、作りたい”という気持ちが、なによりの原動力となっている。

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きっとこういう山里では、昔からのものづくりが今も続いていて、伸一さんもそれを受け継いでいるのだなと思いきや、「それが今ほとんど作り手はいない。昔は稲刈りが終わった頃に山に入って、冬の仕事で自分の生活用具を作ったのだろうけど、今は兼業農家が多い。暮らし方が違うし農閑期という時間もない。代用品がたくさんあるし、物に苦労した世代は特に、面倒だし買った方がいいと言う。」でも興味があるから、近くで何か作っていると聞けば直接訪ねて行く。そこでも「こんなの代用品がいくらでもあるし、もう誰も使わなくなる物なんだから、作り方を覚えたってしかたない。」と言われる。「でも、全く何も無くなったらもったいない。いつか何かの役に立つんじゃないかと思う。知りたくて、作ってみたくて行くんだけど、教えてもらううちに、この人がいなくなったら、この人が持っている知識や技術や道具はどうなるんだろうと思う。寂しくて、心配になる。」うまく言えないけれど、自分の“知りたい、作りたい”気持ちと、今あるものを無くしたくないという思いが、ちょうど合わさっているのだという。
「全部を継ぐってことはできないけど、とにかく一通り覚えようと思う。手でやってみないとわからないことってあるから。自分が持っている限りは無くならないし、いつか何かの役に立つかもしれない。」
伸一さんのものづくりへの興味はここにとどまらない。自分の手で採ったり作ったりした、その土地の素材で作るというのが本物だと思っているから、秋には山に入ってアケビなどの蔓を採り、藁細工に使う稲を育ててもいる。よそで見て綺麗だと思い持ち帰った紫色の稲などは、穂から取って種を蒔き、今では藁細工にこれまでにない彩りを添えている。さらに、そういった藁細工に使う稲を一緒に育てる仲間が出来始めたことや、自分が作った「卵つと」(藁でできた卵包み)に心動かされたという若者との会話など、同じような気持ちを持つ人と会うと嬉しくなるという。「作ることは押し付けるものではないけれど、もし知りたい人がいれば自分が伝えることもできる。」

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自分が、美しい、知りたい、作りたいと思うものを素直に探究し、自分がやりたいこと、今できることは何なのかを丁寧に考え実行していく。「やりたかったことはたくさんあるけど、その時の自分にできる身近なことからやってきた。やらなかったことはあっても、できなかったということではないと思う。」と、いつもしっかり足元を見つめている人の周りでは、小さなことが積み重なって、やがて大きな流れになっていく。
蔓細工はかびやすく手入れが必要だ。稲を刈って藁を乾かす労力だって大変なもの。その土地にある素材から始まるものづくりには、時間も手間もかかる。でもだからこそ、伸一さんに教わって作る、山から採ってきたアケビの蔓の鍋敷きは、きっとみんな大切に使うだろう。物が物としてあるだけではなく、素材を育んだ山や森や空気、それに人の思いが、触れれば強く感じられるから。人と土地とものづくりの結びつきは、そう簡単にはほどけないはず。その結びつきが、“まだ”ある山形で、“もう”消えてしまいそうな山形で、真室川の地に育まれた髙橋伸一さんは、「足元に、まだやれることがあるだろう」と確かに信じて立っている。

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